曲がり角を直角にしか曲がれなくなったのは、確か30歳の頃でした

子どもの頃から、アリを踏まないようにして、歩いてきました。
高校生になると、アリどころか雑菌を踏み殺すのも不安でした。

そんな神経質な私ですが、大学を卒業して、

若者に人気の出版社に入社した頃には、
フツーの人間に戻っていました。

時はバブル。アリだのバクテリアの命などを考えている暇もないくらい楽しい日々を送ってました。

しかし、28歳ぐらいから、また、アリが気になりだし、雑菌が気になりました。
手を何度洗っても、汚れている気がしました。
家電のコンセントを全部抜かないと、家を出られませんでした。
焼肉屋で肉がレアなのが心配で、仲間に先に食べられ、食いっぱぐれました。
同じ道を何度も行ったり来たりしました。

そして、曲がり角が曲がれなくなりました。

正確に言うと、直角にしか、曲がれなくなりました。

仕事は順調でした(奢っていました)。
お金もバブルの恩恵でけっこうありました(浪費していました)。

でも、直角にしか曲がれなくなった頃から、
風向きが怪しくなりました。

そして、スパイが私の命を狙っていると気づいた時には、
いままでうまく行っていたかのように見えた生活が、
すべて裏返しになっていったのです。

友人は離れ、家族には愛想を尽かされた私は、
失業、借金の取り立て、入院など、たいへん追い込まれまして、
ひとりで毎日、漫画などを読んで、四畳半の自室にこもっていました。

そんな私を四畳半から引っ張りだしてくれた経典があります。
そのへんのいきさつをつらつらとしたためてみたいと思います。

よろしくお願いいたします。