神経症と誤診された僕・・・。
曲がり角を直角にしか曲がれない僕。
自動ドアが開くのが怖くて、入り口で足踏みしていた僕。
留守中にコンセントが発火して大火事になるのが怖くて、家を出られなかった僕。
いつも寝不足でぼくやりとして、性的不能に陥った僕。
トイレの便座の雑菌が怖くて、自宅でしか用を足せなかった僕。
当然、医者に行くでしょ。
たくさんの病院に行きました。
医者が信用できなくて、いろいろな病院を転々とする人を、
「ドクター・ショッピング」する人というらしいですね。
ぼくもそんな一人でした。
まずは軽い心療内科から初めて、
最終的にはヘビーな精神科に通った僕ですが、
もっとも信頼できたのは、最後に通ったヘビーな山の中の精神科でした。
でもそこへ至るまで、2年ほどの歳月がかかりました。
なぜなら。
心療内科やライトな精神科は、医者によって意見がまったく違うからです。
どれを信用していいのか、まるでわからない。
たとえば。
ある病院は、精神安定剤の毛の生えたようなものを出すだけ。
ある病院は、倉田百三の神経症について綴った本の感想文を書いてこいという。
ある病院は、自分の所有する農園で泊まり込みで働けという。
精神科は無茶苦茶です。
結局、僕は神経症というレッテルを貼られて、
ろくな治療法もないまま、道を直角に曲がり続けました。
通院を始めても悪化する一方で、
電車に乗ったり降りたり、ホームを行ったり来たりする、
本当の不審者と化したわけです。
自分が病気であることすら客観的にわからない。
ただ毎日、苦しいだけ。狂気に陥る一歩手前。
会社ではもう仕事になりません。
コピー用紙一枚、誰かに手渡すときですら、
そのコピー用紙の端っこで、相手の手を切り落としてしまうのではないかという恐怖で、
紙すら持てない状況でした。
でもこれは物語の序章にしかすぎないのでした。