最初にグッときたのは、有名な「色即是空」などではなく、「不垢不浄」。

『ひろさちやの般若心経88講』は初心者の方に、ぜひ読んでいただきたいです。

ちょっと時代は、前後しますが、
不肖、この私、実はとある出版社で、ひろさんの担当編集者をしていたことがあるのです。

般若心経に出会い、ひろさんの本をきっかけとして、さまざまな仏教の教えを学んだ僕としては、
どうしてもひろさんに会いたかったのです。

もちろん、最初は一読者でした。
失業して、しかも病気の後遺症を抱えて、
何にもしないでぶらぶらしていた時代、
ひろさんの本を読み漁りました。

そしてようやく就職したのがその思想哲学系の出版社でした。
編集長に手紙を書き、どうしてもひろさんと仕事をしたいから、
入社させて欲しい、と。

しかし、ほぼ、1年間で病気をぶり返し、挫折。
正直言いますと、ひろさんの膨大な知識と感性についていけなくて、挫折したのです。
僕がひろさんに、病気療養のため、退社する旨を伝えたとき、
ひろさんはこう言いました。

「人間、死ぬときは死ぬからな」

これは当時はショックでした。
でも今となっては、家宝です。
ひろさんの人生観とユーモアが詰まった言葉です。

さて、『ひろさちやの般若心経88講』には、
そんな独自の発想とユーモアが満載なわけです。
多くの人は、最初に「色即是空」(しきそくぜくう)などのフレーズを覚えるのですが、
私の心にまずグッと来たのは、

「不垢不浄」(ふくふじょう)

というフレーズでした。
これは、「不生不滅 不垢不浄 不増不減」といういわゆる「六不」のフレーズの一部です。
そうです。「不」が6個出てくるから、「六不」です。
ぼくはこの「六不」が大好きです。
この中の「不垢不浄」について、次回、ひろさんのテキストをもとに、ご説明しましょう。